ここではないどこかから

ここどこ。フランス田舎町暮らしの中で想うこと、育児・食べること日常のこと、もっとほんわりした括りの雑感を綴りたい。

フランスの田舎で日本語教師を始めてみた

田舎に来て半年ほど経ったころ、何でもやれることはやってみようという精神で、日本語教師の勉強を始めていた。というのも、この田舎で暮らしはじめたときから、ときどき日本語を教えられるかという質問を受けていたからだ。

フランスにとって日本は憧れの国。伝統文化はもちろん、漫画やアニメ、ポップカルチャーも若者たちが日本に関心を持つきっかけになっている。フランス文化に憧れる日本と日本文化に憧れるフランス、文化的にこんなに相思相愛な国があるかしらとも思う。こんな田舎でも、日本好きな人たちがいると、まるで私が好かれてるみたいで有難いことだと感じる。日本人である私でさえ、フランスで知った日本の素晴らしい文化は数知れない。特に日本ではほとんど見る機会もなかった小津映画など、夫と一緒にDVDを集めたりしたものだ。

この田舎でも熱烈な日本ファンに数名出会った。しかも年齢層は小学生から大人まで。彼らにとって日本語を学ぶということは、なかなか手の届かない機会だ。この地に降り立ったたったひとりの日本人として、仕事になるかどうかは別として、せっかくだから日本語を教えられるようになったらいいんじゃないかと思うようになった。

日本語教師になるには、いくつかの方法があるのだが、日本語教師養成講座を420時間受講することで求人の応募要件を満たせることがある。(試験合格者しか採用しない教育機関もある)私は日本語を教えるメソッドを身につけたかったし、とくに正規の教育機関で働く予定もなかったので、この養成講座を受講することにした。WEBだけで受講できるので、海外にいても特段問題はないが、実際受講してみて、教師としてのスキルが身に着くかどうかは本人の努力と工夫によるところが大きいというのが率直な感想だ。420時間を満たすために、あまり必要なさそうな内容も網羅しているし、何より実践の機会がないので、この講座を受講してはじめてスタート地点に立つという感じだろう。実際この養成講座を受講し終わっても、私自身どう日本語を教えるのか想像さえ難しかった。ただ、お金を取って授業をする以上は、基礎くらいはとりあえず...というのがほんとうのところである。

ある日、図書館に行ったときに、司書の女性から声をかけられた。以前に研修会で通訳をやったときに私を見かけたそうなのであるが、日本語を習いたいということで、授業をしてくれないかと頼まれた。私が養成講座をちょうど終えたところだという話をすると、彼女は「こんな田舎で日本人の資格を持った人から教えてもらえるなんて!」と本当にうれしそうにしていた。それまで彼女は何十キロも離れた都市まで通って日本語が話せる学生に習っていたそうだ。

と、半ばなりゆきで彼女に個人授業をするようになったのだが、意外にも授業をすることに楽しさを感じている。まだ、ひらがなもままならない初心者の彼女に基本的には日本語だけで教える直説法をとっている。授業内容を事前に組み立てるときが一番楽しいのであるが、きっとそれは教えている相手が日本に強い関心を寄せてくれていて、日本語を学ぶことに強い意欲を持っているからなんだろう。

時間が合えばほかの生徒さんも取りたいと思い、町に「日本語おしえます」の貼り紙を貼ることにした。さて結果はいかに。楽しみである。