ここではないどこかから

ここどこ。フランス田舎町暮らしの中で想うこと、育児・食べること日常のこと、もっとほんわりした括りの雑感を綴りたい。

セクシズムを植えつけない子育てとは

ひな祭りや端午の節句が、我が家のフランス人夫にとっては、子どもを男女で分けて祝う点で、違和感ばりばりの古い伝統行事だということは前回の記事で書いたとおりだ。

 

tkchbn.hatenablog.com

 もちろん、そんなに目くじら立てなくてもいいじゃないかという気持ちもある。家族みんなが、目を細めて女の子らしくまたは男の子らしく成長する子どもの姿を見て喜ぶ。でも、我が家はせっかく国際結婚ファミリーなので、ただ手放しにお祝いしているだけでなくて、常に外からの視点を子どもたちに伝えていきたいと思い、そんな小難しい話を娘(10歳)にしながら、娘が希望した生クリームのケーキを作ってお祝いしたのだった。

そんな娘が突然こんなことを言ってきた「ママ知ってる?世界中で3日に1人がパートナーからの暴力で命を落としているんだよ」と。あなたその情報どこから?と聞くと、娘が購読している10~14歳の女子向けの雑誌だという。国際女性デーの特集記事の中で書かれていたことなのだが、ある国では夫の許可がないと就職できないとか、ほとんどの国では女性の方が男性より収入が低いんだよとか、女性が車の免許を取れない国もあるんだよ!と興奮しながら教えてくれた。10歳にして、まだまだこれから自分が女性として生きていくのに解決しなければならないことが山積みだと気がついたようだ。「だからね、女の子だから男の子だから、っていう決めごとはなるべくない方がいいんだよ。ひな祭りもこどもの日も、女の子だからとか男の子だからって括るのはおかしいと思うのはそういうことなんだよ」という話をし、娘も納得したようだった。

先日のぶみという絵本作家の「わたしおかあさんだから」の炎上事件があったけれど、私もあの歌詞には違和感と怒りを感じた部類の人間だ。けれど、何がいけないの?という人も多分同じくらいの割合でいる印象を受けている。「まあ、そんなに目くじら立てなくてもいいじゃない」という気持ちもわからなくもないが、そこは敢えて、どうしても、一線を引かせてくれ!という言葉にならない強い抵抗感があった。親世代の呪いに報いるように頑張ってきた子どもの私がNO!と言っていたような気がする。親の世代から受け取ったとてもネガティブなどろどろとしたものを時々自分の子どもにも与えていると思ってひどく落ち込むことがある。これぞ呪い。それでも、自分は違うとその一線をいちいち引いて進むしかない。夫も私も自分の子ども時代と比べてすごく恵まれている子ども達を誇りに育てていきたいし、そうすることで昇華されていくという感覚もある。だから前のやり方を踏襲してもしなくてもそう簡単に呪いはとけていかないけれど、その時々によい判断を下していくしかない。

その絵本作家で思い出したのだが、フランスにもこれもうNGじゃない?という絵本が結構ある。3歳の息子も大好きな『Roule Galette』(日本語にすると『ガレットころころ』『転がるガレット』『ガレットころりん』)という絵本がある。この絵本は1950年に出版されたらしい。おむすびころりんならぬ、ガレットがころころ転がっていく話なのだが、そのガレットが焼かれた老夫婦の家での夫婦の会話の描写がある。

じいさんが「ああ、ガレットが食べたいなあ」というと、おばあさんが「小麦粉があれば焼いてあげるんだけど、ないのよねぇ」という。するとじいさんが「天井裏に小麦が転がってるから、ほうきで掃いて集めてこいよ。臼でひいて小麦粉作ればいいだろ!」とふんぞり返って命令する。おばあさんは言われるがままに手間暇かけてガレットを焼いて、じいさんに差し出す。するとじいさんは、ありがとうの一言も言わないで「熱すぎてたべれるか!冷ましてこい!」と言ったりする。

これを夫が息子に読み聞かせるときは、おばあさんとおじいさんを逆転させたり、丁寧にお願いさせたり、絶対に原文通りに読まないようにいろいろと工夫している。ただ、この夫婦の様子は導入部分にすぎず、物語はその後に展開されるので、まああまり問題になっていないのかもしれない。

でも、フランス人が抵抗を感じないわけがないと思って検索してみたところ、やはり違和感を訴える記事が見つかった。小さいときからセクシズムを植えつける絵本10冊というタイトルの記事のトップがこの『Roule Galette』だった。

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でも、そんな視点で子どもたちの本棚の絵本を見だしたらセクシズムの芽はけっこう見つかる。その芽をいちいち目くじら立てて摘み取るのもなんだけど、今回の炎上でもわかったように絵本は万能じゃないし、読み聞かせるに価しない本もたくさんあるということを肝に銘じて、せめてうちの子どもたちが「何が悪いかわからない」なんて言う大人にならないように、面倒くさい大人に育ててやろうと思っている。

 

Roule Galette

Roule Galette