ここではないどこかから

ここどこ。フランス田舎町暮らしの中で想うこと、育児・食べること日常のこと、もっとほんわりした括りの雑感を綴りたい。

和製フレンチポップの歌姫がオザケンを歌う

★興味のない方はすみませんなマニアックかつ個人的な記録です。

クレモンティーヌというフランス人歌手をご存知だろうか。バカボンの歌のボサノバ調カバーで知ってる人もいるかもしれない。私が20数年以上前の学生の時に、主に映画などからフランスカルチャーに興味を持ってプレンチポップを聞きはじめようとレコード屋に行ったら、このクレモンティーヌのおしゃれなジャケットのCDがたくさん並んでいて、いくつか買って聴いていた。その後渡仏するまでずっとこの人はフランスの有名なポップスターなのだと思い込んでいたところ、実はフランスではほとんど無名の歌手ということが判明し、日本マーケット向けにいかにも!フレンチポップなCDを出している歌手なのだと知ってちょっと肩透かしをくらったような気になったのを覚えている。

でも彼女のアンニュイで囁くような耳に心地よい歌声はまったくの日本人好みで、多くの日本人がイメージする「パリジェンヌ」のおしゃれで、洗練された女性像にピンポイントにはまってくる。その多くの日本人が抱くフランス的パリ的な幻想の中で歌うクレモンティーヌは、なんとなく初音ミクのようなイマジネーションで作り上げられたキャラクターみたいな存在なのかもしれないと思う。個人的にはそのいかにもさが好きだ。

そして、先日、彼女が小沢健二の曲をカバーしているという情報が入ってきた。

 

 

小沢健二の詩は奥が深くて、それだけに魅力があるのだけれど、なかなかその良さを共有できる人はそうそう近くにはいないようなニッチな存在だ。(だからTwitterではそんな人たちでにぎわっている)ましてや、私のように国際結婚だと相方に彼の言葉の素晴らしさを伝えることは難しい。詩人であり作家である夫と文学や詩について語り合うにはそれぞれの母語で翻訳されたものががないと分かりあうことは難しかったりする。なので、小沢健二の詩が仏訳されたということは私にとっては大事件なのだ。この和製フレンチポップの歌姫がフランス語で歌う小沢健二ははたしてどんなもんか?という興味がふつふつと沸き、休みで暇を持て余している娘のヒアリング力を借りて一緒に聞き取り書き取りをして検証してみた。

いくつかカバーがあるうちの1曲「いちょう並木のセレナーデ」を。この歌は全体的に明るくて躁な感じの曲が多い「LIFE」に収録されているしっとりとしたバラードなのだけれど、私は「LIFE」を大恋愛の大絶頂期に聞いていて、この歌を聴いてこの幸せが長くは続かないという予告を突き付けられ、いつか訪れるであろうブルーの準備をしていた記憶がある。今となっては、この詩は別れた後に彼氏が書いた言葉なのか、それとも予言なのか、ひいては恋愛について書かれた詩なのか、そんなことも分からなくなるくらい、深読みするとグルグルと回ってしまう詩なのだ。それをいったいフランス語でどんな風に歌っているのか、私以外興味がある人なんている気がしないけれど。興味のある方は下からどうぞ。

で、「いちょう並木のセレナーデ」フランス語版のについて結論を言ってしまうと、まったくといってオリジナルの詩で歌われている深みはない。ぐるぐる回ったりもしない。はっきりと失恋について書かれた詩だった。未練たっぷりの彼女が過去の恋愛を思い出している感じ。ちょっと面白いと思ったのは、別れた彼女が語り手となっているところだろうか。She said i'm ready for the "blue" 彼女が「ブルーの準備ができてるの」と言ったところは、He said と彼が言ったことになっている。一番残念なのは、このオリジナルの副題でもある「Stardust Rendez-vous(星屑の中のランデヴ)」というとても貴重なキーワードが、せっかくランデヴというフランス語が入っているにもかかわらず、一度も出てこないことだった。

やはりカフェのBGMで流れているような聞き流されてしまうような、クレモンティーヌのカバー曲に思い入れをする私がおかしいのは分かっているのだけど、もう少し頑張って欲しかった。

この「いちょう並木」のほかにも「ブギーバック」やフリッパーズギターの「恋とマシンガン」も収録されている。メロディのアレンジは「いちょう並木」が一番フレンチポップ的だと思う。何度も聞いていたらジェーンバーキンが歌うゲンズブールみたいだと思った。

Si toujours j’étais sûre que mes larmes te retiennent ce soir

De souviens-tu de nous promenades autrefois ?

On ne s’arrêtait que le temps d’un baiser

On ne pouvait pas rester loin l’un de l’autre

Et ce soir je me retrouve seule avec mes souvenirs

Mais pour toi tous ces souvenirs sont du passé

Et pourtant j’avais si chaude contre toi

Et pour nous plus rien ne comptait que nous deux

 

Et dans tes bras le ciel s’est ouvert à moi

La vie était belle et plus rien ne pourrait nous séparer

Et ces bonheurs auraient pu durer et pourtant toi tu veux me quitter

He said,

Ah ah ah I’m ready for the blue

 

Et quand je vois un bateau quitter le quai et s’éloigner

Je pleure en pensant que notre amour est brisé

Un jour nous oubliera tous nos souvenirs

Nous saurons que le temps peut tout effacer

 

Et dans tes bras le ciel est ouvert à moi

La vie était belle et plus rien ne pourrait nous séparer

Et ces bonheurs auraient pu durer et pourtant toi tu veux me quitter

He said,

Ah ah ah I’m ready for the blue

オリジナルはこちら。


小沢健二-いちょう並木のセレナーデ(LIVE AT BUDOKAN)