ここではないどこかから

ここどこ。フランス田舎町暮らしの中で想うこと、育児・食べること日常のこと、もっとほんわりした括りの雑感を綴りたい。

息子の幼稚園入園にフランス少子化克服について考える

この度、めでたく3歳の息子が幼稚園に入園した。フランスでは幼稚園は「保育学校」と呼ばれ、3歳になるとほとんどの子が入学する。義務教育ではないものの、学費は無償。週に4日間、朝8時半~夕方4時半までというのが一般的な時間割らしい。

本来は9月が学校の年度初めなので、息子は半年前に入学できたのであるが、2歳半に渡仏しまだまだフランス語をうまく話すことができなかったので、お勉強を始めるにはハードルが高いのではないかと思い、半年入学を遅らせた。今は半年前とは違い「何がしたい」とか最低限の意思表示ができるので、遅らせて正解だったと思っている。

この「保育学校」は、親にとっては実に有難いシステムだ。3歳までは育児休暇や保育園、保育ママやベビーシッターなどを利用して何とかやり繰りをし、3歳になればほぼ全員が無償の学校に進学する。フランスの保育園事情は、日本と比較して決して恵まれているわけではない。パリなどの都市部では、なかなか空きがなく入れないので、育児休暇を取ったり、保育ママを利用したり、親が共同で保育する保育園などを活用したりと、事情は日本以上に厳しいケースもある。こうしたサービス利用に際しても、ある程度の補助は出るけれど、持ち出しもそれなりにある。

我が家は田舎にあるので、保育園の空きもそこそこあり、私のように就労していなくても週に何日かは預け先を確保することができた。以前に働いていた頃のように、どうしても必要だったわけではない。しかし、1日中息子と二人きり、知り合いもなく、出かける場所もない地方の村に来た私にとっては本当に有難いライフラインの一つだった。

以前にも書いたテーマだが、日本の少子化対策については、なにかと保育園の待機児童の問題に目が行きがちだ。

 

tkchbn.hatenablog.com

 

もちろん、日本で待機児童対策は喫緊の課題ではあるのだけれど、フランスは保育園など3歳未満の保育システムにおいて決して日本より優れているかというと、そうでもないということが分かる。では、フランスはなぜ少子化を克服し、今もなお出生率を上げているのか?という疑問が自然と沸いてくる。

パリの書店へ行ったとき、ちょうどそんなテーマの本がいくつか並んでいたので、そのうちの一冊「フランスはどう少子化を克服したか(新潮新書)」を読んでみた。

 

フランスはどう少子化を克服したか (新潮新書)

フランスはどう少子化を克服したか (新潮新書)

 

 著者はフランスが少子化を克服できた様々な要因を実際にフランスで育児をする母親としての視点からまとめている。その中で、保育園やその他の保育サービス、保育学校の制度などについて詳しく書かれていて、初めてフランスで子供を学校に通わせる私にとってはとても有難い情報だった。著書の中で著者は少子化が克服された要因の一つに、3歳になればほぼ全員が入学でき、無償の「保育学校」の存在が大きいとしている。都市部では日本並みに保活状況は厳しいけれど、3歳までなんとかすればよいからだそうだ。

3歳までは、保育園に入れなくても保育ママやベビーシッターを活用するのが一般的なのだが、費用負担についてのデータが掲載してあった。公的な補助を差し引いて、月額は保育園:4万5千円、保育ママ:7万5千円 個人ベビーシッター:16万9千円、共同シッター:5万4千円とある。日本と比べても費用面でとりわけ恵まれているわけでもなく、若い夫婦にとってはそれなりの負担に感じるし、ベビーシッターはほとんどの家庭に選択肢はないだろう。

日本だって、3歳児は待機児童の数もだいぶ解消され保育園入園のハードルは下がる。それに、その他の公的な制度や補助もフランスと比較してもそこまで劣っているとは思えない。

ではなぜフランスでは子どもが産めて日本では産めないのか。著書の中では、父親の育休取得率の増加とか、無痛分娩を含めた出産費用が保険カバーされること、保育園では持ち物がなく親の負担が少ないこと、などなど様々な日本のとの違いが挙げられていて、それぞれに納得もするけれど、やはりそれだけではない大きな違いがあると感じる。

私自身、長女を日本で育て、二人目を出産した9年間を日本でなく、フランスに居たら、もう一人産めたかもしれないと思うことがある。それは何より子供を1人にかかる学費の違い。もう一つは、働き方の違い。もう一つ挙げるなら、子どもを社会が育てるという意識の違いだ。

フランスでは大学まで学費はかからない。もちろん私学に入学させる親もいるけれど、すべて公立で質の高い高等教育を受けられる扉がより開かれている。また、労働時間が35時間制なので、たとえ両親が共働きであっても、女性が育児が家事を回し、男性は昇進のため残業を強いられるような構図にならない。実際、35時間制の導入で、男性が早く家に帰れるようになり、子作りの時間が持てるようになったという話は、私の周りでも囁かれていたっけ。

そして、自己責任で子供を産み育てよという社会の目はフランスにはない。例え一人親であっても、産まれてきた子供は社会で育てようという姿勢が根本的な違いにあると感じる。だから仕事をしていなくたって、一人きりで子どもみているのは大変でしょうと、保育園が息子を預かってくれるし、何の引け目も感じなかった。一方で日本では保育は本来家庭でするところを、やむなく預ける先として保育園がある。

まとめると、日本の少子化克服の鍵は、子育て政策の充実に加えて、「大学までの学費無償化拡大」と「労働時間35時間制の導入」でいいんじゃないかと思う。

年末までお世話になっていたすでになつかしい保育園。日本の保育園との違いを次回こそ書いてみたい。