ここではないどこかから

ここどこ。フランス田舎町暮らしの中で想うこと、育児・食べること日常のこと、もっとほんわりした括りの雑感を綴りたい。

息子のために「ポケモンの神話学」を読んでみた

このテーマでずっとブログを書きたいと思っていたのだが、なかなか上手く書けそうにないので、先延ばしにしてきた。けれど、書かないことには何となくすっきりしないので、見切り発車で書き出してみよう。

3歳の息子がポケモンのアニメを見始めた。親は、まだ小さいのに分かっているのか?と思いながら見せていたが、みるみるうちにモンスターの名前を覚えはじめ、強く惹きつけれているようだったので、興味深くその様子を見ていた。これまで息子はいわゆる男子が好きそうな車や電車や戦隊もののおもちゃや遊びにあまり関心がなく、お姉ちゃんのぬいぐるみやおままごとが好きなようだった。それが、ポケモンを見始めた途端、これって男の子っぽいなあという特徴が見えてきた。あまり、子どもの好きなものに男性ぽいとか女性ぽいとかの分類で分けて、それが良いとか悪いとかいうつもりでは全くないのだけれど、男子といういわゆる異性を産んだ母として、男子ってなんだろう?という疑問をいつも抱えていた。なので、おや?これって男子っぽいなあと思った「ポケモン」に興味を持った次第なのである。

何が男子っぽのかというと、100種類以上あるモンスターの色形や呼び名を覚えては、知ってるよ!と教えてくれる。これは水系だよ!草系だよ!○○の進化系だよ!と知ったような口をきいているのだが、彼はどっぷりとモンスターの世界に入り込んでいるようなのだ。まるで、昆虫好きな男の子がいろんな種類の虫の名前を覚えてその特徴を教えてくれているような、または鉄道に魅せられた男の子が、列車の型名や色や形や路線図に詳しいように。このいわゆる、男の子が好きそうな世界とポケモンが同じ分野にあるような気がしたのだ。

とはいえ、私にはあまりにも疎い世界で最近流行ったポケモンGOなどもスルーしていた身としては、息子の頭で何が起こっているのかを知りたい!と、強く思った。そこで、ポケモンとは何かを知るために大学時代に講義を受けていた先生の本に確かポケモンについて書いた本があると思い出し、Kindleに入れて読んでみたのである。

 

この本をわかりやすく簡潔に解説する力が私には残念ながら備わっていないのだけれど、「男の子っぽいもの」て何だ?と、私が漠然と抱いた興味が思い過ごしではなかったと裏付けてくれたような気がした。まず、ポケモンはもともとゲームボーイという携帯ゲーム機のゲームソフトで、東京郊外に住んでいた昆虫少年がゲームデザイナーとなり、作り出したゲームだったということだ。モンスターは昆虫少年の実体験を元に描かれているものが沢山あるという。

紹介文から引用すると、”ポケモンに無意識の野生を呼び覚まされた子どもたちは、ゲームの中で異界のモンスターを追いかけ、その力を感じとっている”。という。この「野性」というキーワードはフランスの文化人類学者クロード・レヴィ=ストロースの主著「野性の思考」から来ている。(「野性の思考」の概要についてはたとえば、こちら。)もっと簡単に言うと、昔から子供たちが虫取りやザリガニを取って遊んでいたのと同じように、ゲームの中でモンスターを獲得したり交換したり、育てたりしている。”子供たちが欲する物は時代や環境によっては変わらない”という。この、「時代や環境が変わっても”子供たちにひそんでいる衝動”」が、「野性の思考」にほかならないという。

これまた、ざっくりとまとめてしまうと、このモンスターは150種類くらいの種類があるのだが、生態系などによって事細かに分類されている。分類をすることはカオスを秩序立てる知的な喜びを味わうことだという。つまり、”図鑑が好きな子どもなどは、「野性の思考」の喜びをかきたててくれる。”のだ。息子が、水系だよ!草系だよ!と生き生きと目を輝かせていたのは、知的な喜びだったのか…と目からウロコが。

この本では、ゲームの役割を肯定的にみている。人間関係がとりわけ商品の原理世界に覆いつくされようとしている現代社会で、ゲームは子供が持って生まれた「野性の思考」を匿い育てるアジール(避難場所)の働きをしているという。特に、その点においてポケモンは秀逸な傑作だと書かれている。

こちらの本ではゲームとしてのポケモン論が著述されているので、息子が惹かれたアニメの世界とはまた異質な物なのかもしれないけれど、もしもこのポケモンの神話学に当てはまるケースならば、子どもの心に潜む野生の芽を摘まないようにしなくては、と母として思うようになった。そして安直に、ポケモン図鑑(フランス語版)を買い与えて、二人で日本語版のモンスターの名前を言い合って遊んだりしている。

 

あまり理解力のない私は、あと数回この本を読まないとなかなか消化できない気がしているが、子どもが備えている「野性」の衝動と、「男の子が好きそうな物」の関連がいまいち解明できなかった。ザリガニ取りや虫取りをする喜びは女子の私にも覚えがあるけど、やっぱり男の子の方が専門的だし、マニアックだったりするよなあ。息子にもそんなマニアックさや精密さや理屈っぽさが備わった男子になって欲しいなあ、と私の理想のタイプを重ねてしまう。