ここではないどこかから

ここどこ。フランス田舎町暮らしの中で想うこと、育児・食べること日常のこと、もっとほんわりした括りの雑感を綴りたい。

空飛ぶイギリス人

先日、夫の新刊が出版された。これで何冊目となるのだろうか、夫は私と知り合う前には既に本を出していたものの、大当たりするような本はなく、それでも地道に細々と書き続けてきた。彼にとって書くことは正にライフワークで、その時間さえ持てるのなら、どんな仕事でもどんな生活でもよいという。知り合った頃は、売れるかどうかは問題ではなく、良質な本物の文学を書き、世に出していくことが大事だと話していた彼も、最近は売れたいというお金儲けの観点ではなくて、多くの人に読んでもらいたいという意味で沢山売れて欲しいと口に出すようになった。

今回の新刊は、初めての出版社ということもあり、これまでとは違うアプローチで多くの人に届けられるといいなと家族としては期待している。

 

とはいえ、夫も田舎での本業の傍ら、売り出しのために大々的なイベントに参加することもかなわない。それでも週末などを利用して、ちょこちょこと催しに参加している。

先週金曜日は隣町の小さなな町の本屋さんで、出版記念朗読会を開催してくれたので、家族で参加した。本当に小さな本屋の中のスペースに椅子などを置いて、本屋の店員さんとわざわざ足を運んでくれた数人の読者と、朗読をしながら、質問を受けたり、本にサインをしたりととてもアットホームな時間だった。マーケティング的に言えば、本当に細やかな催しではあったけれど、地域の良質な厳選された本を提供したいという熱心な本屋さんと、その本屋さんを信用して長年繋がっている地域のお客さんと、隣町に住む作家が、短いながらも本について語り合うことができるなんて、なんて素敵な時間だろうと思う。そして、そういう書店にはこれからも生き残ってもらいたいし、本を読む人にはなるべくそういう本屋さんとコミュニケーションをとって本を買ってほしいと思う。

 

さて、その夫の新刊のタイトルは直訳すると「空飛ぶイギリス人」。ある日、フランスの名もない小さな村にイギリス人が空から飛んで降りてくるという話。私たちが日本に住んでいたかれこれ数年前に書いたものなのだが、それが今出版となって、なんだか不思議な縁を感じている。設定は、今私たちが住んでいる田舎町くらいの規模で、おそらく時代はインターネットはもちろんテレビも電話もないような時代。田舎に暮らす人たちはイギリス人なんて見たこともなければ、英語さえわからない。ひょっとしたら彼が何人なのかもわからない。しかも空から降りてきた。

私もひょっとしたらこの田舎町では、アジアの国のどこかからある日突然現れたこの空飛ぶイギリス人みたいな存在なのかも知れない。今は日本がどんな国かみんな情報として知ってはいるけれど、日本に行ったことがある人も日本人に会ったことがある人も、日本食を食べたことがある人もほとんどいない町なのだ。と、フランスの田舎町に移住することなんて想像だにしていなかった頃、夫が数年前に書いた本の主人公と自分を重ねてみては、とても不思議な気持ちになっている。

f:id:tkchbn:20170925190725j:plain